Translation Practice part 7: 状態・状況

Continuing trends showed that ABC party was ahead in another 154 seats.

(拙訳)
衰えない風向きから、ABC党はもう154議席を取得し、優位に立つことがわかった。

(模範訳例)
相変わらずABC党がリードし、さらに154議席の差をつけていた。

(反省点)

  • showは「人」や「表」だけでなく「現象」を主語にもつこともある。現象はfiguresのように「意味」をもつものであったり、trendsやdevelopmentsのように直接目に見えない「動き」を意味するものであったりする。「~の数字は~になっている」「(傾向としては)~になっている」などと「示す」を使わずに訳したほうが自然な表現になることが多い。
  • Population trends show 「人口の動き(動態)を見ると、~となっている」
  • Statewide trends show 「全国的に~となっている」
  • Recent trends show 「最近は~となっている」
  • Continuing trends show 「相変わらず~となっている」

 

Since 2010 saw both a record year for M&A activity and a resurgence of restructuring, the combination depressed net income.

(拙訳)
2010年は、M&Aの件数が記録的な伸びを見せ、また企業再編の機運が再燃した年であったため、純利益が減少した。

(模範訳例)
2010年は、M&Aの件数が記録的な数字に達し、リストラが再び盛んとなるという要因が重なり、純利益が減少した。

(反省点)

  • seeは「現象」の表現としては最も頻繁に用いられる動詞。show以上に様々な主語をとる。「組織」「年月」「状況」など、日本語の発想では「見る」ことのできないものも主語になり、その語に関連して起こった出来事を示す表現として使われる。
  • 組織 saw 「~の中では~が起こった」
  • 年月 saw 「~年には~が起こった」
  • 状況 saw 「~の状況では~が起こった」
  • 人 saw 「~が起こった」
  • the combinationを「~という要因が重なり」としているのに感心。

 

New products continue to show strong performance as they become available in overseas markets.

(拙訳)
外市場でも購入できるようになり、新製品は好業績をあげ続けている。

(模範訳例)
新製品は、海外でも発売され、相変わらず好調な売れ行きを記録しています。

(反省点)

  • ここではshowの目的語がperformanceという多義的な言葉になっていますが、この語がstock「株式」など「値段の上下を示すもの」について用いられた場合は「パフォーマンス」「値動き」、product「製品」について用いられた場合は、「売れ行き」などの意味になります。
  • showが「製品」のように業績といった「数字」を示す名詞を目的語とするなら「示す」以外に「計上する」「記録する」といった意味になります。The company showed a record profit for the first quarter.なら「会社は第一四半期に記録的利益を計上した」といった具合。

 

The world record still holds.

(拙訳)
その世界記録は未だ破られていない。

(模範訳例)
この世界記録はまだ破られていない。

(反省点)

  • 自動詞holdに共通する意味は、「breakしたりloseしても不思議はないもの(あるいはいずれはbreakされるべきもの)が元の状態を維持している」ということ。
  • hold「to continue to be true, good, available etc」(longman)。
  • 「未だ」は古語の範疇なのかな、と。翻訳ではあまり古語に類する言葉は使わないほうがよい、と以前教えられたことがある。それに倣うなら「まだ」がよいのだろう。

 

The United States now faces a shortage of workers, not a glut.

(拙訳)
アメリカは今や、労働力過剰どころか労働力不足に直面している。

(模範訳例)
現在、アメリカでは、労働者が余っているどころか不足している。

(反省点)

  • face=「直面する」とするのは少々安易です。この公式に慣れてしまうと、逆に英訳する場合「直面する」という日本語の発想でしかfaceを使えなくなってしまうでしょう。「直面する」が最も自然な訳語として用いられるのは、difficulties「困難」やchallenges「難題」のように解決すべき問題の類を目的語とした場合。faceがそれ以外の実際に生じている状況を目的語とするときには、「~にあう」「~になっている」などと訳したほうがよいことも多いのです。例えば、He faces harassment.は「彼はいやがらせに直面している」よりも「彼はいやがらせにあっている」の方が自然。「労働力不足」は確かに解決すべき問題ですが、これもこの時点における実際の具体的状況ですから、「~になっている」とすることができそうです。

 

The United States enjoyed a building boom this year.

(拙訳)
アメリカでは、今年建築ブームが起こった。

(模範訳例)
今年のアメリカは建築ブームに沸いた。

(反省点)

  • 単に「起こった」とするよりも、enjoyのプラスの含みを出すために「沸いた」などとする方がよさそう。「楽しんだ」は不自然。

 

Early Tuesday ABC party maintained a steady and growing lead in India's general election.

(拙訳)
インドの総選挙では、火曜の早い時間帯において、ABC党が相変わらず着実にリードを広げていた。

(模範訳例)
インドの総選挙において、ABC党は、火曜日の早い段階で相変わらず着実に差を広げていた。

(反省点)

  • maintainが「維持する」と言えるのは、control可能な事態を目的語とする場合で、選挙結果のようにcontrol不能な事態を目的語としている場合はその主語にとっての好ましい状態が持続していることを示しています。そのような場合は「相変わらず」などと訳すのが自然。

 

Recent national statistics show that the number of overweight children has doubled since 1980.

(拙訳)
最近の国家統計によると、肥満児の数が1980年から2倍に増加している。

(模範訳例)
最近の全国統計によると1980年以来肥満児の数は二倍に増加している。

(反省点)

  • 「最近の全国統計によると~となっている」「最近の全国統計では~となっている」○。
  • 「最近の全国統計は~であることを示している」△。

 

Research and development expenses aggregated about $20 million in the last year.

(拙訳)
昨年度の研究開発費は約2千万ドルに及んだ。

(模範訳例)
昨年度の研究開発費は総額で約2千万ドルでした。

(反省点)

  • aggregateには「合計」「総額」という訳語が原則必要になる。

 

The company's short- and long- term funding programs benefit from the large, diversified customer base.

(拙訳)
その会社の短期及び長期の資金調達プログラムにとって、大規模で多種多様な顧客基盤は好材料となる。

(模範訳例)
当社の短期・長期の資金調達プログラムは、顧客基盤が大規模かつ多様であることから恩恵を得ています。

(反省点)

  • benefit fromは「好ましい状況」を目的語にとる。
  • largeやdiversifiedを述語的に解釈するのが肝。
  • the companyを「当社」と訳すのは、文脈抜きではなかなかやりづらい気がする。
  • 「短期・長期」「長・短期」あたりがよい訳か。

 

The situation presents great complexity.

(拙訳)
この状況はかなり複雑だ。

(模範訳例)
状況は非常に複雑化している。

(反省点)

  • present「(状況)は~になっている」。「状況は非常な複雑さを呈している」は分からづらい。

 

The industry saw significant consolidation in the last year.

(拙訳)
その業界では昨年、重要な企業統合があった。

(模範訳例)
昨年、業界では大規模な統合が進んだ。

(反省点)

  • see「~の中では、~という現象が起こった」と解釈する。
  • significantの意味は、「重要な、重大な」といった感じでよく紹介されている。重要な、重大な、ってどう違うの?と思いながら長年放置していたのでここで整理しておきたい。longmanでは「1 having an important effect or influence, especially on what will happen in the future」としてまず「重要な(≒important)」に相当する意味を紹介している。次に「2 large enough to be noticeable or have noticeable effects」として「重大な(≒large)」におそらく相当するだろう意味を紹介している。つまり重大なとは、影響等の”大きさ”を指していると理解できる。例文として、A significant number of drivers fail to keep to speed limits.がある。これはa large number ofとパラレルで数の大きさを表し、「多数の」ぐらいの意味であろう。もう一つ、There is a significant difference between the number of home births now and ten years ago.も挙げておく。a significant differenceは「大きな違い」というぐらいの意味だろうと思われる。やはり大きさを表している。その意味で上の拙訳は素朴に「重要な」の意味を選んでしまっている点で思慮に欠けているといえる。

 

The trade figures represent a deficit of $5 billion.

(拙訳)
貿易収支は50億ドルの赤字を計上している。

(模範訳例)
貿易収支は50億ドルの赤字を計上した。

(反省点)

  • representの主語が「数量」を示す事物、目的語が「数値」を示す名詞の場合、「~は~であった」「~は~を計上した」「~は~を記録した」などと訳すことができます。「示す」「表現する」とは訳せません。

 

National infant mortality statistics show that African-American babies are twice as likely to die from SIDS as other babies.

(拙訳)
国内の乳幼児死亡率に関する統計によると、アフリカ系アメリカ人の乳幼児は他の人種の乳幼児に比べて乳幼児突然死症候群による死亡率が2倍となっている。

(模範訳例)
全国的な乳幼児死亡率の統計では、SIDS乳幼児突然死症候群)によるアフリカ系アメリカ人の乳幼児死亡率が他の人種よりも2倍高くなっている。

(反省点)

  • 「全国的な乳幼児死亡率によると~」、「全国的な乳幼児死亡率の統計では~」
  • infant「a baby or very young child」(longman)乳幼児
  • national「related to a whole nation as opposed to any of its parts」(⇔local)全国の、「relating to one particular nation as opposed to other nations」(⇔international)国内の

 

The refugee presented a picture of sadness, anxiety, and helplessness.

(拙訳)
その難民からは、悲しみや不安、徒労感が見て取れた。

(模範訳例)
その難民の様子から、悲しさと不安と無力感が漂っていた。

(反省点)

  • 「~の様子から、~だった」はうまい。
  • helplessに対して「徒労感」は手持ちの辞書にはなく私の捏造。徒労とはan exercise in futility「むだに終わった(in futility)努力(exercise)」のこと。helplessの意味として「無力感」「絶望」「途方に暮れる」などは各種辞書にも出ているので、素直にそれを選ぶべきだったか。「unable to look after yourself or to do anything to help yourself」(longman